2007年 06月 17日
田町のリスト
職業柄、比較的渋めのニュース情報を得ることがある。

今週平日のとある朝、「マリモ保護啓発へ資料集」という見出しの記事を見た。なんでも、北海道釧路市の教育委員会が、阿寒湖のマリモ保護の普及啓発のために『マリモと阿寒湖の生態史資料集 緑王国』を発行したとのことである。渋い。

この資料集、「マリモ研究の父」と称される西村真琴なる人物が大正時代に阿寒湖を調査した際の回顧録『緑王国』が基になっているという。

人は色々な形で後世に名を残す。イングランド王リチャード1世はその勇猛さから獅子心王と呼ばれた。フィリップ2世はフランスをヨーロッパ一の強国にし、尊厳王と呼ばれた。異名とは存命中の生命の輝きの結晶である。

そしてこの西村真琴氏が平成の世にまで残した異名は、「マリモ研究の父」。さすが。あぁこの人はマリモに出会うためにこの世に生を受け、そして散っていったんだなと思うと、朝からえも言われぬ感慨が襲ってくるのであった。俺も「ペンギン研究の父」と呼ばれる日が来るのだろうか。

そんなことを思いながら夜のちょっと遅い時間まで仕事をこなし、日経MJを読みながら地下鉄に揺られていると、三田で若さ爆発テニスサークル!といった風情のカップルが乗ってきた。雰囲気と乗車駅と話の内容からして、慶応大学のカップルであろうか。

男曰く、「やっぱゼネラリストを目指すべきかスペシャリストを目指すべきか悩むよなぁ!」とのこと。頭痛の方がその場にいたらブッ飛ばされても文句言えないくらい大きな声で喋っているものだから、俺も嫌がおうにも聞かざるを得ない。それにしても、ずいぶん漠然とした、意味のないことについて悩んでるのね。

その後も、「スペシャリストは…、」とか「ゼネラリストは…、」とか彼女に意味不明な論理を繰り広げて熱くなっていたが、とりあえず公共のスペースで大声で喋り続けても平気、という貧困な想像力の持ち主は大したスペシャリストにもゼネラリストにもなれないと思うので、彼女はとっとと彼と別れてエロ・テロリストの道でも模索すればいいんじゃないだろうか(結構可愛かったし)。そんな政策提言を考えながら、推定慶応ボーイの「…リスト、…リスト」発言を聞いていたら、ふいにフランツ・リストのメフィストワルツが聴きたくなってしまった。

日経を読むのをやめ、おもむろにipodをセットし、メフィストワルツを流す。

終電近くの地下鉄には、神に愛されたリストと想像力の欠如の著しいリストが同居しているのであった。
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by chinstrappenguin | 2007-06-17 23:59 | 日記 | Top Page


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